赤目四十八滝心中美水
綾ちゃん、お元気ですか?
あの時、綾ちゃんの凜とした決意に、あたし励まされたんだよ。
迦陵頻伽を、あたしは胸に刻んだんだよ。
だからね、あたし旅に出たんだ。もちろん一人で。
心配なんてしないでね(でも、あたしは綾ちゃんのこと、いつも心配してるけど)元気に生きてるよ。生きるってこと、生かすってこと、コンチクショウまだまだ!って、あたし思えるようになったんだ。
ほら、あたしいつも「眠り」に逃げ込んでたでしょう?うとうとと、誰かの口づけを待ってたでしょう?柄にもなくオーロラ姫に憧れてたんだ、たぶん。
でもさ、綾ちゃんに学んだんだよ。
あたし、綾ちゃんに学んだんだ。
だから今、すごく幸せだよ。
サビシイも、セツナイも、クルオシイも、ぜーんぶ、ひとつ残らず、この胸ん中沁み込ませてさ、綾ちゃんみたいに、背すじ伸ばしてさ、
まだまだ歩いてんだ。
ありがとう、綾ちゃん。
雨の日はきみを想う
無言というコトバがあるのだ
雨と新しい日曜日
だから世界は
だからあなたも
ほろびない
我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか
水際をゆっくりと歩いていると思うのだ。あなたもまたそうして歩きながら時折ふと思い出したように左岸を眺める。私が右岸を眺めるようにして。
川の美しい街だった。
流れに沿って歩く我々はどこに向かっているのだろう。少しだけずれた歩調を気にするのはやめて対岸の気配だけ感じることができればきっと橋が架かることもあるだろうと水面に映る空を見た。
風も吹くなり 雲も光るなり
空白に向かい言葉を奏でる
光あるところで、それは透明になる
光なきところで、それは群青を帯びる
いかようにでもなろう
いかようにでもあろう
それが空白を埋めつくす頃きっと
何かが呼吸をはじめるのだろう